「……俺だって、こんなつもりじゃなかったのにな」
何秒か沈黙が続いて。
まるで独り言のように、倉本くんが上を向きながらつぶやいた。
「入学した当時なんか、クラスメイトなのに杉田の存在すら知らなかった。だけど…」
「倉本くん……?」
倉本くんは携帯の画面をパチンと閉じた。
「…皮肉なモンだな。拓に誘われた勉強会で杉田のコト気になり始めたけど、結局拓に杉田持ってかれちまったんだもんなぁ」
……え?
今、何て………?
「ちょっと待って。確か倉本くんってななっぺのことが好きだったんじゃ…?」
そうだよ。
ななっぺが拓に失恋した直後ぐらいの勉強会の時、倉本くんがななっぺに「俺がいるだろ…」的な発言してた気がしたんだけど。
私、てっきり倉本くんはななっぺのことが好きだったんだと思ってたけど……、それって私の勘違いだったの!?
「杉田、それ……、マジに取ってたのかよ?冗談に決まってんだろ。とりあえず細井は俺がつるんでる男子の中でも一番人気だからな。テキトーに言ってみただけ」
「てっ、適当って……」
確かに…その時のななっぺも、倉本くんのコト、完全に相手にしてなかった気がする…。

