急にそんなことを言われて、私の胸はドキンと高鳴った。
みんなの前ではずっと「知らない」を通してた倉本くんだけど…、やっぱり拓の事情、何か知ってるんだ…?
少しだけ、期待が芽生える。
だけど…、真実を聞くのはそれ以上に怖い。
でも聞かないと…、前に進めない気がする。
「アイツ、同じクラスの松沢と話してるだろ?」
「うん、そうみたいだね」
「松沢……、たぶんマジだぞ」
「え?」
倉本くんは用語集をまた自分のポケットにしまって、私の方を見つめてきた。
その表情は、かなり真剣だった。
「…相談されたことはある。詳しい事は口止めされてるけど…、松沢が必要以上に話しかけてくるから困るって」
「…そうだったの?」
それを聞いて……
少しだけ、ホッとした。
拓が松沢さんのこと、困ってるって言ってくれて。
拓は松沢さんに気持ちがあるわけではないんだ…。
「でもソレ、かなり前の話だから。中間テスト終わった直後…ぐらい?」
「え?なら今は……?」
「知らね。俺も最近拓とは一言二言話すだけだから。拓もそろそろ根負けしたかもなぁ〜」
「うそ……」
じゃあ、その間に拓が心変わりした可能性はあるってこと…?
「不安になった?」
「…なるに決まってるよ」
もしかして倉本くん……ワザと言ってる?
私のこと、からかってるの!?
ひどいよ、私…本気で拓のことで苦しいのに。

