倉本くんが制服のポケットから出してきたのは、勉強会の初めにみんなに配った、社会の歴史の用語集。
私が何日かかけて、今回のテストの範囲の中で重要だと思うところだけをリストアップしたものだった。
「ココとココの年号、間違えてる」
「うそ!?」
倉本くんに指差されたところを確認して、私はさっきカバンに入れたばかりの社会の教科書をもう一度取り出して年号を調べた。
「あ……、100年間違えてる」
「100年って信じられねーだろ。間違えたまま語呂で覚えるトコだったし」
「ごめん…って、コレ、あゆ達にも配ったんだった!どうしよう……」
「家帰って電話しとけよ」
でも…、他のみんなは気付かなかったのに、倉本くんだけが私のミスに気付いたの…?
倉本くん、私からこの用語集が配られたまんま、社会のノートに挟んでただけだと思ってたけど、ちゃんと見てくれてたんだ…。
「……杉田らしくねぇよな」
倉本くんがポツリとつぶやいて、私はただ、「ごめん」としか返せなかった。
確かに、自分でも年号100年間違えるとか、そんなミス信じられないよ。。。
「まだ拓と話すらしてないんだろ?」
「え?あ……、うん」
あれから…、拓との状況は全く変わらない。
拓のことが気になって仕方ない。
だけど、自分から話しに行くのは怖くてできない……、そんな日々が続いていた。
やっぱり、拓と距離ができたまま……しかも松沢さんがどんどん拓と近付いてるみたいだし、無意識にかなりのショックがきてるんだろうな。
そんな私の心…、倉本くんにも気付かれてるみたい。
「拓のこと…、知りたい?」
「……倉本くん、やっぱり何か知ってるの?」

