「ごめん、柚、あかねちゃん!一緒に帰れないや。家に帰らなくちゃ!」
「え〜?映美佳、帰っちゃうの?」
「ホントにごめん!!」
電話を切った映美佳は、急に慌てて机の上の荷物を片付け始めた。
「急ぐから…、机も直せないけど」
「いいよいいよ。うちらでやっとくから。早く帰りなよ」
「ありがと、あゆ」
「気を付けてねー」
自分の荷物を一気にカバンに詰め込み終わった映美佳は、ダッシュで教室を後にした。
「映美佳…、早かったね。うちらも帰ろうか」
一同映美佳の行動の素早さに驚いてたけど、ひと足早く我に返ったあゆがそう言うと、机を直し終わったななっぺがカバンを持ってあゆに駆け寄った。
「原状回復したし…、あゆ、一緒に帰ろうよ」
「うん。あかねちゃんと柚は?一緒に帰るの?」
「あぁ…、柚、どーする?」
あかねちゃんの目線に気付いた私は、まだ開いたままの数学の教科書を持ち上げた。
「…この問題だけ、分かんなくて。今から先生に聞きに行こうと思ってたんだ」
「そっかー。じゃー私、先に帰るよ?」
「うん、分かった」
みんなに色々教えながら自分自身も勉強してたんだけど、数学でどうしても分からない問題が出てきた。
たぶんこの時間帯なら、まだ職員室に数学の先生…残ってるよね?
「じゃあ帰るね。柚も気を付けて帰るんだよー」
「うん。みんなも追い込み頑張って」
「はいよ〜」
他のメンバーも一気に教室から出ていった。
私は教室に一人きりになった。

