長い時間に感じた。
けど本当は数秒だったのかもしれない。
少し経って、拓がふっと笑ったような気がした。
そして、私の頭に温かなものが触れた。
「いや、マジで違うから。それ以前に俺、怒ってねーし」
「え?」
そんな拓の声が聞こえてきて、私はとっさに頭を上げた。
あ…、拓、笑ってる。
しかも私の頭に乗っているもの、拓の手だったんだ。
「柚は何も悪くない。だから余計なコトしたとか思うなよ。…不安にさせてゴメン」
「えっ!?でもずっと黙ってたし、機嫌悪いのかと…」
「あれは柚のコトじゃ…いや、柚のコトなのか?」
「え?」
何…、それ?
誤解だったみたいだけど、やっぱり意味は分からない。
すると、拓が私の肩に手を置いてきた。
足元の倒れたグラスがまたガチャガチャと音を立てたけど、そんなのに構わず、拓は更に私の身体を引き寄せてきた。
「たっ、拓!?」
「…あのさ」
今まで手をつなぐことはたくさんあったけど、こんなに拓と距離が近いことなんてなかった。
心臓の音が、すごい勢いで大きく、速くなっていく。
状況がいきなり過ぎて…全然分かんないよ。
どうしちゃったの、拓!?
「俺達、付き合い始めて4か月経つだろ…?」
「うん…」
私の耳元にボソッと入ってきた拓の言葉。
でも、緊張が高まった頭では上手く理解できない。
ただ、相づちを打つことしかできない。
「なんつーんだろ?俺もいたって健全な中2の男で…」
「うん」
「分かんねえかな?柚、頭いーんだろ?」
「え?あの…頭が回らなくて……」
「……俺さ、ずっと自分自身と戦ってたっていうか…。だから…」

