引っ込み思案な恋心。-2nd






ふと思いついたことを口に出すと、松沢さんは納得したようにうなずいた。






「靴やトラックに細工するって方法もあるけど、手っ取り早いのは確かにそれだよね。でも杉田さん、ホントに頭いいんだね。瞬時にそんなコト考えつくなんて」



「こんなことして…、何が楽しいの?」



「…その顔。見てみたかったんだ。杉田さんの苦しんでいる顔。なんかさ、仲直りしてから瀬川といる時のあなた、本当に嬉しそうな顔ばっかりしてるから。段々腹立たしくなっちゃって」



「私から見たら、松沢さんのやってることは信じられないことばっかりなんだけど…」







私達が話せない時を狙って拓に近付いたり、拓のリレーの結果次第で別れさせるとか言ったり……






松沢さんはどれだけの卑怯な作戦を頭に描いているんだろう…?









「まあ…、真面目なあなたには分かんないよね、きっと。世の中はあなたみたいな考え方の人ばかりだと思わない方がいいよ。私は本気だから。瀬川が明日1位になったら、瀬川からあなたを引きはがして、私が瀬川の彼女になるから」



「私がそんなこと拓に頼めないって知ってて言ってるんだよね…?」



「頭がいいなら、何が最善か考えてみて?……明日のリレーが楽しみだね。私ももちろんリレーの選手なんだけど、瀬川が1位になれるように全力で走って差を広げるから。…私の話はこんなトコかな」