そして松沢さんは、ふうっと息を吐いた。
「最初杉田さんって聞いてもピンと来なかったんだよね。『誰、それ?』みたいな。1年4組の教室まであなたの顔見に行ったんだけど、すごく大人しそうな子でビックリした。瀬川がそんな目立たない女子を選ぶなんて、意外な感じしたから」
風が、少し強くなった。
ザワザワと、中庭の木々が騒ぎ始める。
「それから毎日瀬川とあなたの様子を見てた。だからすぐ分かったの。いきなりお互いの態度がよそよそしくなったコト」
「だからってそんな…、卑怯なこと……」
「恋愛にルールはないと思うけど?私は油断してる方が悪いと思ってるし。…あれから仲直りしたのは気付いてたんだけど、合宿中なら離れ離れになるしイケると思ったんだけどなー、結局ダメだったわ」
「あの…、結局何の話を………?」
松沢さんの想いは何となく分かったけど、確か『私に話がある』ってココまで引っ張られたんだよね……?
「うん。何か語っちゃったけどさ、要は別れてほしいの、瀬川と」
「え!?」
自信満々に足を組みながらそう言い放った松沢さんは、ニッコリと私に笑った。
その笑顔が、逆に怖いと感じるほどだった。

