意識はしてしまったけど、今は特に松沢さんとは話すこともないなと思って、そのまま松沢さんの横を通過しようとした……その時だった。






「……えっ!?」






いきなり松沢さんに腕を掴まれた。






驚いて松沢さんの方を見ると、彼女は怖いほど真剣な顔をしていた。






しかもちょうど影になっている所を通っていたから、薄暗くて更に松沢さんが怖く見える。






「…杉田さん。話があるんだけど」



「私に……?」






松沢さんの力が強くて、掴まれた腕が痛む。





私はきっと動揺した表情になったと思うけど、松沢さんの表情は硬いまま、崩れることがなかった。






「ちょっと松沢さん!やめなよ」






私が松沢さんに腕を掴まれているということを知った映美佳は、すぐに松沢さんの腕をはがそうとしてくれた。





だけど、松沢さんの力は映美佳もかなわないくらい強かった。






「私は杉田さんに話があるの。杉田さん、借りていい?」



「でも……」



「すぐ終わるから。…来て、杉田さん」



「え?ちょっと待って……、わっ!」






私と映美佳の反抗も虚しく、私は松沢さんに無理矢理引っ張られる形でまた中庭に戻ることになってしまった。