「まぁ行こうぜ。送ってくから」



「うん、ありがとう」






背負っていたカバンはさすがにそのまま自分で背負ったけど、それまで持っていた手提げ袋はいつの間にか拓の手にあって、私は数歩前を歩き始めた拓を追いかけるようにまた歩き始めた。








こうやってまず拓の家に寄って、拓が自分の荷物を部屋に置いてからまた二人で今度は私の家に向かって歩き出す…という帰り方が、いつの間にか当たり前になってしまった。






拓からしてみたら、もっと私と話したい、一緒にいたいから、私のことを家まで送ってくれるみたい。





私も……、拓と一緒の気持ち。






中学校に入学した時は、家から学校が遠くて嫌だな…と思っていたけど、今は遠くて良かったと思える。





ちょっとしたデートみたいだしね。








「柚、ほら手ぇ貸して」



「え…」






まだちらほら同じ中学の人達が下校してるから、ちょっと手をつなぐのが恥ずかしい。





同じ制服の人達の視線を気にして少し戸惑っていると、そんな私を見かねた拓は強引に私の右手を握ってきた。






「からかわれるの、俺もう慣れたから気にならねえし」



「私はまだちょっと…」



「いいじゃねえか、言いたいヤツには言わせておけば。これも『公認カップル』への道だよな〜」



「うっ、うん…」






拓はやっぱり強いな…。






実は付き合い始めた当時、クラスメイトから影で「瀬川と杉田さんじゃ似合わないよね」とか言われてたのを聞いたことあって、それがずっと気にかかっていた。






あの時は同じくその話を聞いていたあゆが一喝してくれたんだけど…






周りから見たら私と拓って、やっぱりそう見えるんだな…とか思っちゃったんだよね。