「でも…後悔はしていない。俺は…俺だからな」

幾多は一度目を瞑った後、リンネに顔を向けた。

「先生には感謝をしている。この世界を知り、人間のいろんな面を見れた。ありがとう」

「どういたしまして」

「最後に、弟に会ったら伝えて欲しい…。お前は、間違っていない。だけど…俺も間違ってはいないと」

「わかったわ」

リンネは頷いた。

「俺は…誰かに殺されたり、裁かれたりはしない」

幾多の右手には、銃が握られていた。

「俺は…俺が決める」

最後の力を振り絞り、幾多は銃口を頭に押し付けると、引き金を弾いた。




「…」

数秒後、頭がふっ飛んだ幾多を見ずに、リンネは前を見つめ、呟くように言った。

「…でてきなさい」

「ククク…」

リンネの声にこたえて、幾多の亡骸の中から天使が飛び出して来た。

「やっとですよ。人間の癖に、死ぬまで体を渡さないとは」

「…」

肩をすくめる天使に、リンネはゆっくりと手を伸ばした。

「周りに人間がいない!どこかで、せいをつけないと」

ため息をついた天使の口を、リンネは手でふさいだ。

「あなたに価値はなさそうね」

リンネは冷笑を浮かべ、

「死になさい」

一瞬で、灰も残さずに、燃やし尽くした。

「リンネ様」

すると、後ろに刈谷が再び姿を見せた。

「価値がない者達に、あたしの暇潰しを滅ぼされる訳にはいかないわ」

そう言うと、リンネは消えた。

「は!」

刈谷は深々と頭を下げた後、周囲にテレパシーを送った。

(炎の騎士団よ!リンネ達が戻られた!リンネ様のもとへ集え!そして、やつらを焼きつくのだ!)

刈谷はかっと前を睨んだ後、リンネの後を追ってテレポートした。