「お前達!手を出すな!」

ギラは、魔物達に一喝した。

「こいつは、俺の獲物だ!」

その言葉に、魔物達は震えながら、後退った。

「ま、魔物一匹のくせに」

天使は翼を広げると、一斉に羽毛を放った。

「舐めるな!」

ギラの角が放電し、そこから放たれた雷鳴が、すべての羽毛を焼きつくした。

「え」

唖然とする天使に、ギラはゆっくりと近付いていった。







「リンネ様」

とある高台に佇むリンネ。その後ろで、控えている刈谷を見ることなく、リンネは遥か彼方を見つめていた。

「天使達の復活が、始まったようです」

「そのようね」

リンネは、フッと笑い、

「ギラやサラ…騎士団長は、勝てるでしょうけど…人間側は、ジャスティン・ゲイくらいね」

目を細めた。

「あんたは…勝てるんだろう」

その時、リンネの足下から声がした。

「刈谷」

「は」

リンネの声に頷くと、刈谷は消えた。

「…と思っているから、あたしの元に来たんでしょ?幾多くん」

リンネは足下に、微笑んだ。

「フッ」

幾多も笑い、リンネを見上げた。

仰向けになったまま動けない幾多の全身は、血管がみみず腫のように盛り上がっていた。

「どうやら…防衛軍の本部で、天使が復活した時…俺は助かったと思っていたけど…違った。供物にされただけだった」

「…」

リンネは、無言で幾多の言葉を聞いていた。

「俺は、人間に生きる価値があるとは思っていない。しかし、生きる価値がある人間もいる。その違いは、そいつらの生き方だ。しかし、人間の社会は正しく生きるようにできていない!だ、だから、俺は!」

幾多の口から、血が流れた。

「だから!多くの人を殺した。価値ある…やさしい人間を守る為に….だけど…」

幾多は、視線をリンネから、空に変えた。

「一番守りたいものは、守れなかった…。理解もされなかった」

殺された妹。そして、幾多のやり方を真っ向から否定する弟。