「その力、どうするの?」

さやかは、砂がなくなると、立ち上がった。

「あ、ああ…」

高坂は、手にある銃を目で確認した後、 目線を横にそらし、

「勿論…人々の…」

思いを口にしょうとした。

「一つ質問」

しかし、高坂の言葉は、さやかによって遮られた。

さやかは一歩、高坂に近付くと、目を見つめながら訊いた。

「守るべき世界は、どっち?今いるところか…それとも、ブルーワールドなの」

「そ、それは」

高坂は、たじろいでしまった。

高坂は、兄である幾多を追ってブルーワールドに向かった。

世界の壁を越えた障害で、記憶を失っていた。

今の自分を形成するアイデンティティは、ブルーワールドの二年間である。

当初の目的も忘れていたが、今は少しずつ思い出していた。

しかし、それでも…今現在は、幾多を探すことよりも、人々を守りたいと思っていた。

そんな高坂の思いは、揺らぐことになる。

さやかがどこからか、茶色の封筒を取り出し、それを高坂に渡したからだ。

「はい」

「何だ?」

「読めば分かるわ」

「?」

高坂は首を傾げながら、封筒を開けた。

そして、中の手紙を読む前に…文面を見て、手を震わせた。

「こ、これは…」

「さっき会ったのよ。いえ…会ったというより、会わされたのよ。あなたのお兄さんにね」

「や、やつは!」

高坂は、手紙を握り締めると、さやかを睨んだ。

「来ているのか!この世界に!いるのか!」

高坂は叫びながら、走り出した。

すぐに、さやかを追い越すと、そのままあてもなく走り去りそうな高坂を、今度はさやかが声を張り上げて止めた。

「無駄よ!彼なら、ブルーワールドに戻ったわ」

さやかは目をつぶってから、言葉を続けた。

「助かった、この世界にはようがないらしいわ」