「はい!」

しばらく話を聞いて、

「すぐに戻ります!」

姫百合は携帯を切った。

そして、2人に頭を下げた。

「生徒会室に、鞄を忘れてまして、今から取りに戻ります!ごめんなさい!先に失礼します!」

すぐに頭を上げると駆け出した姫百合の背中を見送りながら、輝は口を開いた。

「部長…。あの店ですが…」

「わかっている」

高坂は頷き、

「しかし、我々にはどうすることもできない」

姫百合の後ろ姿を見えなくなるまで、見つめた。

「ほっておくのですか?」

輝は、高坂の横顔に目をやった。

「ブルーワールドと、この世界は違う。彼らを悪と言えるか?人間として、今まで育ってきたのに」

高坂の言葉に、輝は肩を落とし、頷いた。

「そうですね」

そして、再び人の流れに視線を移し、

「この世界には、人間しかいないのですから…。一応ですけど」

無理に笑ってみた。

高坂は大きく深呼吸すると、ゆっくりと歩き出した。

「我々も戻るぞ。部室にな」

「はい」

2人は、左右に流れる人々を突っ切るように、真っ直ぐに歩き出した。







「…」

空間に差し込んだ炎のナイフを抜くと、幾多はブルーワールドに降り立った。

目立たないように、町の外れにある路地裏を出口に選んだ幾多は、静かに歩き出そうとして、足を止めた。

「フン」

鼻を鳴らすと、ビルとビルので間にできた闇を睨んだ。

「君も変わっているね。」

闇の一部が濃くなり、人形を取ると、ヤーンに変わった。

「あのような場所に飲みにいくなんて。まあ〜他人の趣味をとやかく言うつもりはないけど」

ヤーンは、肩をすくめた。

「…」

幾多は何もこたえずに、ヤーンの横を通り過ぎた。

ヤーンは大きく手を広げると、大袈裟に嘆く素振りをした後、振り返り、幾多に訊いた。

「考えてくれたかい?新しい防衛軍に入ることを」