「あっ!はい」

自分の行動が軽率だったことに気付き、姫百合は直立不動になった。

だが、高坂は別のことを考えていた。

(最初の問題は、どうして…彼女に見えて、俺には見えない。何か違いがあるのか?)

高坂は迂闊には、近付けなかった。

「相変わらず、固いな」

悩んでいる高坂の目に、何もない空間から、見えない扉を開けるように、男が飛び出してきた。

「!?」

驚く高坂と違い、姫百合は普通だった。勿論、彼女の目には、普通に店から出てきたとしか見えなかった。

だから、少し気になったのは、出ていた人が、高坂の知り合いのようだったからだ。

「流!」

冷静に判断しょうとしていた高坂は、幾多流の登場により、感情を露にした。

「お、お前は!ブルーワールドに戻ったんじゃないのか!」

「そうさ。戻ったけど、また来ただけさ。ここのコーヒーが飲みたくてね。普通の人間にも美味しいからさ」

「普通の人間!?」

高坂は、眉を寄せた。

「じゃあね〜真!」

幾多は、どこからか…炎でできたナイフを取り出し、それを空間に刺し込んだ。

「できれば〜ブルーワールドで会いたいな。向こうなら、いろんなことができるからさ」

そして、そのナイフをドアノブのようにして引くと、空間が開き、ブルーワールドへの道が開いた。

「な!」

あまりの驚きに、高坂は幾多に近づくタイミングを失ってしまった。

扉はすぐに閉まり、何事もなかったかのように、普通の景色に戻った。

「い、今のは!」

幾多がいなくなった瞬間を見て、呆気にとられた姫百合よりも、高坂は自分の不甲斐なさよりも、ブルーワールドへの帰り方を目にして、希望に心を躍らせた。

(普通の人間でもいける)

高坂は左腕の制服を捲ると、手首に巻き付いたブレスレットに目をやった。

「いけるな」

右手をブレスレットに添えると、形が変わり、装飾銃に変化した。

そして、その銃のグリップを握り締めた瞬間、高坂は目を疑った。

更地に見えた場所に、喫茶店が立っていたからだ。

「なるほど」

高坂は頷いた。