「首で結構!だけど!」

輝は、真琴の肩をぎゅっと掴み、

「学園の生徒を危険にさらす訳には、いきません。学園情報倶楽部のメンバーとして!」

真琴の目を見つめた。

だけど、真琴は輝を見てはいなかった。

「あれは、行方不明の女子!」

「え?」

目を輝かせ、輝の肩越しに、人混みの中から、行方不明になった生徒を見つけた真琴は、輝の手を振り払うと、猛ダッシュで走り出した。

「ち、ちょっと待って〜」

輝が振り向いた時には、真琴の姿は、人混みに消えていた。

「な、何!?」

真琴を見失ったのは、ほんの一瞬である。それなのに、見えなくなるなんてあり得なかった。

「くそ!」

輝は唇を噛み締めると、真琴が走り去ったであろう方向に向かって、走り出した。




「フッ」

マスターは口元を歪めると、カウンターに置かれた小銭を数えだした。

「マスター!」

先程から殺気立っていた男が、マスターに駆け寄った。

「いいのですよ。お金を頂きましたし」

小銭を数え終わると、マスターはまたフッと笑った。

「まあ〜。全然、足りませんが」

「…」

そんな2人の会話を、奥のテーブル席で寛いでいる男が黙ってきいていた。






「ここです」

姫百合に案内されて、やっと喫茶店にたどり着いた高坂は、内心は平常を装っていたが…心の中では、絶句していた。

(ここに、喫茶店があるだと!?)

何故ならば、高坂の目には、何もない更地しか映っていなかったからだ。

しかし、実世界とは違い、ブルーワールドで過ごした経験が、高坂にいろんなことを考えさせていた。

(異空間の扉でもあるか?いや、魔法が使えないこの世界で…。いや、神隠しとかあったか!)

ある日突然、人がいなくなることを神隠しと言った。

高坂は、そんな迷信を信じてはいなかった。

おそらく、誰に拐われたか、もしくは、異空間に引きずり込まれたが、正解だと思っていた。

「姉が、中にいるかもしれません」

恐る恐る中を覗こうとする姫百合を、高坂は止めた。

「慎重にいきましょう」