色んな事が頭の中を駆け巡ってきた。


『助かるのか?』


『見つかるのか?』


自分一人の力ではどうにも成らない事は判っている。


皆の力を得なければ行けない。


そんな思いを抱いて,夏休みを利用して手書きのパンフレットを作った。


勿論,骨髄移植希望者を募る為のドナー勧誘のパンフである。


それをコピーして街頭で1人,朝から晩まで配って歩いた。


商店街の人達にも忙しい合間を縫って話を聞いてもらった。


今のような,コンピューターネットワークが確立されていなかった当時は,登録出来る病院も少なく,大きな病院でしか扱って貰えない。


それには何処の病院へ行けば登録出来るかとか,どのような事をするのか等も書いたパンフレットを渡しながら説明して行った。


『こんな事をしても結局無理だ!

僕一人がやったんでは到底適合者は見つからない!』


そんな気持ちが襲ってきては挫けそうに成ったが,彼女の為に必死で頑張った。



その合間を縫って香織にも会いに行き,気付かれない様に笑顔で接した。


彼女自身,その当時は唯の貧血としか思っていないので,退屈だ!を連発しては,


『何処か遊びに行きたいね。』


とぼやいていた。


『早く元気になって,海にでも行こうな!』


と,言ってはみたものの,そんな事出来る訳が無い。


下手な慰めは反って彼女を落ち込ませるだけだ。


しかし,そうでも言わなきゃ彼女は変に思ってしまう。


毎日,精密検査と称して抗体性の薬を飲まされては採決。


その後輸血と,注射針が殆ど1日中体に刺さった状態に在る彼女が海になんか行けるわけも無く,僕なら嫌に成ってとっくに病院を抜け出していると思う。