嫌な予感がしてすぐに病院に連れて行った僕は,待合室でボーっと壁掛けの時計を見ていた。
二時間近くして呼ばれた僕は,
『どうですか? 彼女大丈夫ですか?』
とたたみかける様に聞いた。院長先生が,
『軽い貧血ですから,心配ないですよ。
一応精密検査が必要なので,今日のところは入院しますが…。』
と言った。
そうこうしているとさっき電話した彼女のお母さんがやって来た。
『有難うね。 電話くれて。
浩志君がここまで連れてきてくれたんやね。
ほんまにありがとう。』
と言ってすぐに診察室の中に消えて行った。
ここからが,本当の僕と彼女の病気との戦いが始まるのです。
彼女の病名は重症再生不良性貧血と言う難病である。
あの日、僕は初めて神に手を合わせた。
いつまで続くか解からない彼女の明日。
出来るだけ長くと!
何日かして彼女の病室をたずねた。
『香織!どう?退屈やろ。
マンガ持ってきたけん読んでな。』
『ありがと!うち退屈で死にそうやわ。
もう元気なんやから,はよ帰らして欲しいわ。』
と言って,ベッドの上で頬ずえををついたまま笑って見せた。
そんな彼女の白い歯が本当に元気そうに見えたので,ホッとした。
『そうやな,もうそろそろ高校受験も近いし,はよ元気にならんといけんな。
一緒の高校行きたいしのう。』
と励ましながらも,自分の顔が暗くなって行くのがわかった。