彼女達の発表会に僕は行けなかった。


その日はアンサンブル・コンサートに出演しなければいけなかったからであった。


県下の中学校から3パートずつ,5~7人編成で組んで出なければいけなかった。


僕は、木管五重奏の部門で演奏をした。


演奏曲は『金髪のジェニー』であったが,クラリネット・フルート・オーボエ・ピッコロ・バリトンサックスの5楽器である。


初の演奏会にかなり緊張した僕は,何ヶ所か間違えてしまった。


かなり辛かったのに、先輩達の慰めのお陰で余計落ち込んでしまった。


あれは,慰めと言うより嫌味である。


その頃香織は,演目『英語版ー蜘蛛の糸』である。


彼女は地獄に落ちた魂その1の脇役ではあったが,台詞の長いのが五ヶ所も有ると嬉しい悲鳴を上げていたのを思い出して,


『上手く行っているかな?』


と心配に成ってきた。


演奏会が終ると、直ぐに演劇の発表会に駈け付けたが、既に彼女達の演目は終った後であった。


既に彼女達は帰った後だったので,仕方なく僕も帰る事にした。


帰宅すると,まもなく香織から電話が入った。