長い1日も終り,家に帰った私は香織の病気が発病してからずっと付けている日記に今日の出来事を書き,今日の昼の香織の言葉を思い出していた。


『絶対死なへん!』


その言葉が私の心臓を抉るように響いてくるのである。


赤血球ならABO型の何れかで輸血も出来るだろう。


しかし,骨髄移植をするには白血球の型(HLA型)が合わなければいけない。



その為に骨髄バンクがある。


HLA型とは,ヒト白血球型抗原の略で骨髄移植の成功を握る各人固有の遺伝性の抗原である。


数万通りの組み合わせが有り,兄弟でも4分の1の確立でしか一致しない。


しかし親兄弟で一致するのは殆ど稀である。


香織の両親では一致しなかったのである。


妹は,未だ年齢が満たないのでドナー登録は出来ない。


それでも一応調べては見たがやはり一致しなかった。


それが他人ともなると数百分の1とも数万分の1とも言われるくらい適合率は低いのである。


A・B・C・D・DR・DQ・DPのHLA型の座が有り,そのうちのA座・B座・DR座の3座の適合(1座に付き2個だから,合計6個の適合)が必要である。