「なんで明がダメなんだよ」
俺は半ば掴みかかるように友達に聞いた。
「佐原は特別じゃん」
「特別……?」
「怪我させちゃダメじゃん」
特別の意味がわからなかった。
怪我させちゃダメなのは……皆に言えることだと思う。
俺が小さな頭でグルグルと考えている間に、明は一人で教室へ戻って行った。
戻って行く後姿が、ひどく小さく見えたのを覚えてる。
頭をしょげて。
一歩一歩がゆっくりで。
何かを言いたくても言えない想いを、拳を握ってこらえてた。
俺は何も理解できなくて、かける言葉もわからなくて、明の後を追うことができなかった。

