すると明は声を上げて泣き始めた。
「……っく……ひっく……あたしがね、怪我したら……先生、怪我させた子を怒るの」
「それは相手が悪いから先生が怒るんじゃねぇの?」
「違うの……あたしの不注意で怪我した時も、相手の子を怒った……『佐原になんてことしたんだ』って……」
幼稚園でのことがフラッシュバックする。
「佐原は特別じゃん」
「怪我させちゃダメじゃん」
もしかしたら俺が知らないだけで、昔からそういう感じだったのか?
「でもどうして……?」
「たぶん……お父さんが学校にお金もだけど、椅子とか机とか寄付してて……
でもそれはお父さんの事業の一環みたいで……いろんなところにしてるし……幼稚園の時からしてくれてて……っく」
「わ、わかった! ごめん、喋らせて悪かった!」
明の嗚咽が可哀そうになって、俺はそれから何も言わず背中をさすった。

