明はランドセルも何も持っていなかった。
「哲太、お願いだから目立たないようにして?」
「無理だろ。こんだけ派手に怪我してたら……」
「そ、そっか……じゃぁ哲太のズボン貸してよ」
「は!? 着替えるなら家帰って着替えりゃいいじゃん。隣なんだから」
「ダメ! それじゃお母さんにバレる!」
「バレる?」
俺が聞き返すと明はハッとしたような表情を浮かべて口を抑えた。
「どういうことだよ、明。ランドセルも持ってねぇし」
「な……なんでもない。お願いだからズボン!」
何でもないはずないだろ。
俺から目、逸らしておいて。
焦ったような口調で。
眉寄せて。
俺、結構お前のことわかるんだぞ?

