「折りたたみ、傘の人―ですか?」

「―ですよ、」

クッと、小さく喉元で鳴らすように笑った音が、鼓膜を震わす。

そういえば、黒崎って傘に書いてあった。
「ぇ、でもなんで番号―」

そこまで言って、あ。と声を漏らす。

「そっか、確か同じ―」

「会社の、ですねぇ。」

クスクスと、また小さく"黒崎"さんが笑う。そのたびに、なんだか私のほうが無駄にパニックに陥っていく。"黒崎さん"は、私の慌てようをまるであざ笑うかのような余裕でもって笑っているのに。