「あ、今傘もってなかったりする?」

「―はい、」

「あー、じゃあさ、俺のその傘使って帰って?せっかく持ってきてもらったことだし。」

「――はい、」

「それと――」


電話を切る最後に言われた言葉のときにはもう、なんか「はい」っていうだけでまるっきり言葉なんて頭に入ってこない感覚だったものだから、何を言われたかあやふやな記憶しかない。

けど、なんとなくだけど―すごく後から考えてみればかなり衝撃的なことをいわれた気がする。

普段の冷静な頭の私だったら『あ、面倒くさい展開になるかもしれない状況に入りそう』って即座に思ってシャットダウンの態勢にするようなことだった―はず。