「は?」

「だーかーらー。ホント、物分かり悪い奴」

呆れながら言う悠斗に、少なからず疑問を覚える。
おいおい。会って間もないあんたに、物分かりが悪いと言われる筋合いはないよ?

そう思いながら、そのひとつ前に彼が言ったことを思い出す。

『キスしたかったから』

普通に言ったらセクハラで訴えられそうな言葉を、こうも簡単に行ってしまう彼。
もう、突っ込み所なくなっちゃう……。

「なに……それ?」

「だから言ってるじゃん。キスしたかったからキスした。ただそれだけの理由。ダメ?」

ダメって聞かれても……。
答えられないよ、あたし……。

会って時間も経ってないのに、なぜかあたしは、彼に反論することができなかった。

「意味分かんなくて結構。それよりあんた、ヒマ?」

「は?」

「ヒマかどうか聞いてんだよ。あんたバカじゃね? こんな物分かり悪い奴初めて見た」

おい。なんだお前。

呆れながら言う悠斗に、だんだん苛立ちは増すばかり。
あー、こんな奴にキスされたのかあたし!!

「ヒマですけど。つーかなに!? 変なことに巻き込まないでよね!!」

「巻き込まねーよ。じゃあお前、明日からココに来い」

……は?

開いた口が閉まらないあたし。

さっきあたし、変なことに巻き込むなって言ったよね?
なんで、ココに来なきゃなんないのっ!?

「なにそれ!! やだよ、あたしそんなの!」

「いいから来い。言ったろ、カラダで訴えろって」

「言いましたけども……」

「んじゃ、決定」

軽々しくそう告げる悠斗。

「なんでよ? あたしじゃ来る意味ある?」

「ある。お前、面白いしさ」

ふ、ふざけるなーーーーーーーーー!!!!!

高校生活初日、静まり返った校舎に、あたしの叫び声が響き渡った――。