結局、ショーをやるホールに入ったのは開演5分前。
ギリギリの時間帯だったからか、席は後ろになってしまった。
――俺は濡れないからいいんだけど。
しばらくしてショーが始まると、イルカは投げたボールをとったり、ジャンプして天井にぶら下がってるボールをタッチしたり……。
イルカってスゲーな、意外に。
もしかしたら、緩奈よりすごいんじゃね?
ちらりと隣に目をやると――緩奈は目をキラキラさせている。
……だろうね。
「お前、来たことねぇの?」
「んー。小さい時に一度だけ。あとはないかなぁ」
だからか。
緩奈が妙に興奮している理由が分かった。
ショーも終わり、時間は2時を回っていた。
「どっか行きたいとこある?」
「えーっと……ここ! ここ行こう?」
緩奈が指差した場所は――ふれあい広場?
「お前……ここ幼児向け」
「行きたいっ!! いいじゃん、ねっ!?」
別に俺はいいけど――恥ずかしくねぇの?
「じゃあ、行くか」
「うん!!」
元気良く返事する緩奈の手を、そっと握った。