【悠斗side】

「すご~~い!!!!!」

「……うるさい」

今、俺たちはイワシだかカメだかエイだかがいる水槽の前にいる。
その水槽に、ぴったりくっついてガキみたいに目をキラキラさせる緩奈。

「そんな騒ぐことか?」

「だって、すごくない!? イワシの大群だよ!!」

そう言って、イワシの大群を指差す緩奈。
俺には、気持ち悪いとしか思えないな……。

「……俺にはお前の価値観が分かんねぇ」

「夢のない奴!!」

「うっせ」

緩奈の鼻を摘みながら言うと、緩奈はムキになっていた。
頬を膨らませ、完全にすねてる。まぁ、そこが可愛いんだけど。

「ほら、次行くぞ」

緩奈の腕を無理やり掴み、行き先も分からないまま人の流れに沿って歩く。

トンネルやエスカレーターまでも、全部水槽で囲まれていた。
やっぱスゲーな、水族館……。

「ねーねー悠斗」

パンフを見ながら、俺の袖をひっぱってきた緩奈。

「なに?」

「あたし、これ見たい!!」

指差したところを見ると、あぁ、イルカショーね。

「……濡れる席じゃないならな?」

濡れるのは絶対に嫌だ。

「ありがとー!!」

……こいつ、自分のいい風に解釈してるし。

「あ、1時からだから早く行こ!?」

あー、そうなんだ。だったらもっと早く言えばよくねぇ?
なんでこいつはこう……ギリギリなんだ?