帰り道――

辺りは暗くなっていて、周りを歩いている人はほとんどいない。

「お前ん家、どこ?」

「あっち」

「バカ」

適当な返事をしたからか、悠斗にデコピンされた。
まぁ、当たり前ですよね……。

「そこの角、右に曲がって」

「最初から言え」

相変わらず冷めている悠斗。

あれから、名前を呼ばれてない。いつもと同じ、“お前”か“あんた”。

さっきのは、気まぐれですか?

と、いきなりあたしの手を握ってきた悠斗。

「は、は!?」

「なに?」

いや、『なに?』じゃなくて……。

手だよ、手!!

あたしが右手をにらみつけているのに気付いたのか、悠斗は『あぁ』という反応をしてる。

「お前、迷子になりそうじゃん?」

……あたしは何歳児だ!?

「な、なんないもん!!」

「へいへい」

……なんだその、呆れた返事。

「明日、8時な」

「なにが?」

「――迎え行く」

迎え? 8時?

あたしの頭に疑問符が浮かんでいるのを察知したのか、悠斗はあたしの鼻を摘んだかと思うと、呆れながら言った。