「ハァ……ハァ……ハァ〜……」

「お前、大丈夫?」

ナンパ男から逃げて来たあたしたちは、いつの間にか裏路地に来ていた。

肩で息をするあたしをよそに、こいつは涼しい顔してる。
ムカつく〜!!

「まぁ、あいつらもここまでは追ってこないっしょ」

「ハァ……ていうか、なんであんたがここに? なんで、助けてくれたりなんて……」

「お前日本語おかしくね? まぁ、なんっつーか、心配だった」

「えっ?」

「なんか、やな予感っつーかさ」

「な、なによっ、それ……」

「まぁ、よかったね。俺が来て」

ニンマリ笑う悠斗に、あたしの胸はまた高鳴る。

なんで……。どうして? あたし……なんで、悠斗にドキドキしてるの?

「ば、バッカじゃない? 別に、あたしはあんたなんか来なくても……」

「どうだかな」

悠斗はかがんで、あたしの顔を覗き込むように見る。

悠斗に近づいた時に香った、甘い匂い……。
香水かな? いい匂い。なんの匂いだろう……。苺……とは違うような。桃? なんか、落ち着くな……。