言うほうが早いか、悠斗の右ストレートが男の左頬に当たる。

男はそのまま、道路に倒れ込んだ。もう一人のほうは、呆然と突っ立ったままで。

「ゆ、悠斗……」

「バーカ。こんなのに捕まってんじゃねーよ」

振り向き様に、呆れながら言う悠斗。

あたし、呆れられてばっかだなぁ……。

「ね、これ、やばくない?」

「はぁ? んー、かもね」
「かもねって。どうすんの?」

人差し指を唇に当て、考えるそぶりを見せる悠斗。

可愛いなぁ……。じゃなくて!!

「ねぇ、どうすんの? マジで」

悠斗はニヤリ笑うと、あたしの腕を掴んで走る。

「えっ!?」

「逃げる!!」

ニコッと笑う悠斗と、悠斗に腕を掴まれて走るあたし。

なんで? あたしの心臓、今スッゴくドキドキしてる。
なんなの? この気持ち……。