甘い涙

 「おばあちゃんが危篤だと知らされ、アメリカから駆けつけた時も、梅雨のじめじめしていた季節だった。
 おばあちゃん、誰にも病気のことを話してなかったから、皆驚いた。
 葬儀とか終わっても俺一人ここに残って、笠松さんに相談にのってもらっていた。
 何日か経った夜、一人で居るとふと、おばちゃんが亡くなったと実感が湧いてきて…淋しくて、めいに逢いたいって思った。
 そう思ったら、居ても立っても居られなくて、めいの家へと駆け出していた。
 めいの家は、真っ暗だったけど、二階の窓、一つだけ灯りが点いていた。
 その窓にももが居て、カーテンにじゃれているみたいだった。
 そこへ、めいが顔を出したんだ。
 ももを抱き上げて笑っていた━。
 笑ってるめいを見たのは初めてで、俺ドキドキした。
 笑ってるめいがすっごい可愛くて。
 ━やっぱ、めいが好きだ!って。
 めいの笑顔に励まされたんだ。
 あんな風に泣いてた子が、こんな風に笑ってる。
 強いなって。」
 「違うよ…。」
 話を遮りそっと言い添えた。
 「私が…笑える様になったのは、もものお蔭なの。
 杉崎くんが一生懸命育ててくれた〝もも〝が居てくれたから…だから…杉崎くんのお蔭で笑えるようになったんだよ…。」
 杉崎くんは少し辛そうな顔をすると、私を思いっきり抱きしめた。