甘い涙


 杉崎くんは、しばらく落ち着くまで何も言わず、背中を撫でてくれていた。
 「どうして…私が撫でてた猫が、杉崎くんの猫だって…分かったの…?
 探してた猫じゃないかも…。」
 私は、静かに言った。
 白い猫など、どこにだって居る。
 あんなに小さくて、おまけに雨まで降っていたのだ。
 「ちょっと、ごめん。」
 私から腕を離し、ラックの引き出しの中を探している。
 腕の温もりが消えると私は急に心細くなった。
 その想いが伝わったのか、またすぐに私を左腕に抱くと、持ってきた一枚の写真を見せてくれた。
 そこには━2匹の白い猫が向かい合わせで丸くなって眠っていた。
 2匹両方の脇腹に、こげ茶のハート模様…。
 ハートの下の部分がくっついて、羽のように見える。
 「あんまり可愛い格好して寝てるから、デジカメ探して撮ったんだ。」
 「   …もも…  。」
 「このハートの模様ですぐ分かるだろ。」
 写真を見ながら頷いた。
 そこに写っているのは、まぎれもなく、幸せそうに眠る〝もも〝だった。