「…父の知り合いじゃぁ…。」
 「ごめん。
 ああ言わないと、めいちゃん、疑って話し聞いてくれないと思ったから。」
 頭を掻きながら、申し訳なさそうに言う。
 「コウくんが、すごい熱心に、机に額が擦れて赤くなる程頭を下げて頼むから、断れなかた。」
 杉崎くんは、コーヒーを運びながら、感情を押し殺した声で、
 「笠松さん、何をされにいらしたんですか?」
 と尋ねる。
 「あ、…そうそう、頼まれてた大学の資料持って来たんだ。」
 大きな封筒を渡すと、
 「じゃあ、そろそろ、約束している時間に遅れるから…。
 めいちゃん、また。」
 と、そそくさと、部屋を出て行ってしまう。
 そんな笠松さんを見送りに、杉崎くんも玄関へと行ってしまった。
 ━私の後見人を頼んだのは、杉崎くん…?
 ━でも、それでは、おかしすぎる…。
 笠松さんが家に来た時、私はまだ高校へ入学していない。
 杉崎くんが私の事を知っているはずがないのである━。