甘い涙

 塀垣で囲まれ、庭木が何本か高く伸びているのが見える。
 近付いて行くと、門の所に男の人が所在なさ気に立っている姿が見える。
 ━お客様かな?
 と思うと同時に、隣を歩いていた杉崎くんが、その男の人へ駆け寄った。
 私は邪魔かなとは思ったものの、その男の人に見覚えがある気がして、近付いていった。
振り向いた男の人は、何と、笠松さんだった。
 ━何で、笠松さんが、杉崎くんの家に?
 「…こんにちは…。」
 私は一応挨拶し、杉崎くんと、笠松さんを交互に見比べる。
 笠松さんは相変わらず飄々として言った。
 「コウくん、教えてあげてもいいんじゃない?」
 長い溜息をつくと
 「めい、笠松さんも入って下さい。」
 杉崎くんは、家の扉を開けた。
 玄関を入り右側へ廊下を歩き、突き当たりの部屋へと案内された。
 そこは、縁側つきの居間となっていた。
 窓から庭が見える。
 南向きで、とても日当たりがいい。
 8畳の和室の部屋に、ソファー、その横にラック、テーブル、TVがすっきりと置かれている。
 今は襖が全開になっている、続き間の隣はキッチンになっている。
 ━整理されてて、暖かい感じの家だな。