甘い涙


 ━このまま逃げ出したい…。
 そう思ったがガッチリ手を握られていて、出来そうもない。
 泣き腫らした顔を見られるのが恥ずかしくて、杉崎くんが居ない方を向いて歩く。
 そこにはグランドがあった。
 小学生が友達同士、バスケットボールで遊んでいる。
 私は、1年生の時の球技大会を思い出していた。
 バスケ部顔負けの、速攻。
 気持ちのいい程入る、3ポイントシュート。
 体育館の2階、大勢の人の隙間から見えた杉崎くんの姿は、別世界の人だった。
 私は、絶対、杉崎くんの視界の片隅にも入らない存在だと思っていた。
 なのに、今こうして、隣に並んで歩いている。
 私の事を、好きだとさえ言ってくれる。
 本当に、この世の中は不思議で満ち溢れている。