甘い涙

教室のざわめきが、だんだん大きくなっていってる気がする。
 でも杉崎くんで全く周りが見えない。
 こんなに人と接近したことがない私は、どうしていいのか分からず、呼吸する事さえ忘れ、杉崎くんに見入っていた。
 ━すっごい…宝石みたいなとび色の瞳。
 サラサラの髪。
 どこかの絵画から抜け出してきたみたい…。
 私にとっては永遠とも思える時を、のんびりしたチャイムの音が終了を告げてくれた。
 「具合が悪かったらちゃんと言えよ。」
 優しい笑顔でそう言うと、ポンと私の頭を軽くたたき、席に着いた。
 ━ はぁ~…。━
 やっと呼吸の仕方を思い出す。
 先生の話なんて全然耳に入って来ない。
 目の前の背中が気になって。
 杉崎くんの声や顔が、体中ローテーションしていた。