「中の状況は」
「はい、おそらく人数は2~30名です。受け渡しの方はまだですね」
「なんでお前はそうやって一人で勝手に……」
「アバウトだな……人数ぐらい完全把握しておけよ」

人が頭を下げているうちにさっさと仕事を始めた華南を見かねて誠也は口を開いた。
が、すぐさま華南の言葉に切り捨てられたのだった。
本日何度目か分からないため息。
サッと髪を掻き揚げて靖也は華南を見た。

「何」
「何もないわ……」

靖也は机の上に用意されていたマイクとイヤホンに手を伸ばした。
そしてそれらを丁寧にジャケットに付けていく。
手馴れた様子の靖也を見ながら華南も同じように準備を整えた。

「それらしき動きが見え次第撃ちに入る。合図したら全員突入や」
「了解しました」
「ええか、一人でも取り逃がしたら許さんで……」

僅かにずらされたサングラスの先に見えた靖也の瞳は酷く真剣だった。
その場にいた警官達に刺激を与えるには充分過ぎるくらいの射るような眼差し。
本当はこういう顔なのかと、任務前の靖也を見るたびにそう思う華南だった。



片手に銃を握ってG7の倉庫の西に居る華南。
靖也の方は東側にいる。
イヤホンの先から聞こえる声を半ば無視しながら華南は敵陣に乗り込もうとしていた。

『お前、絶対無茶だけはすんなよ』
「分かってる……しつこいぞ?」
『心配したってんねんやろ……』
「余計なお世話だ」

ほんま可愛ないなぁ!と小さめだが確実に叫んでいる声が聞こえる。
倉庫の側にあった木材を踏み台にして音も立てずに屋根に飛び乗る華南。
少し汚れた窓からだったが中の様子はハッキリとうかがえた。
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