Look ON!

「お前なぁ、もうちょっと仲良くできひんか？」
「する理由が分からない」

真っ黒なスポーツカーの助手席に腰掛けながら華南は靖也を見ずにそう言った。
少し固めの革のシートに居心地の悪い思いをしながら……

「もうちょっとな……こう、世界を広げてみようとは思わんの？」

チャリと音を立てながら揺れるキーを差し込んでエンジンを入れる。
車のダッシュボードから出したサングラスをかけて靖也は華南を盗み見た。
特に何処かを見るわけでもなく前方に向けられた華南の視線……
一体全体何処を見据えているのか、誠也は分からなかった。
そして「……別に」の言葉と共に向けられた視線には光さえも感じられなかった。

「寂しい女やな……」

殆ど口を動かさずに呟いた誠也の言葉が聞こえていたのかそうでなかったのかは定か。
しかし華南が何も言わないところ辺り……案外聞こえていなかったのかも知れないと靖也は一人思う。
そして、嫌味のつもりやったのに。と、声に出さず心に吐いたのだった。



掴めない、分からない……ミステリアス？　否、そうじゃない。
初めて会った時から冷たくて光の灯らない視線を華南に感じていた。
何処か己に被る部分……けれど限りなく正反対な性格。
いくら一緒に過ごしても、きっと、俺には分かるわけがない。
水城 華南と言う一人の女を把握するのはおそらく、自分には無理だと、そう感じていた。



車を走らせてから２０分ほどで指定の場所に到着した２人。
Ｇ７の倉庫からは数百メートル離れた死角になるＦ１の倉庫の中に車は入る。

「遅なって悪かったなぁ」

車を降りるなり謝罪の言葉を述べると靖也は軽く頭を下げた。
いえ、大丈夫です。と靖也の一番近くに居た警官が背筋をのばした。
薄暗い倉庫のすみに止められた誠也の車を静かに下りた華南。
中央に緊急で設けられた簡単な本部に向かって一人歩いて行った。
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