栗矢「悪かったね、見送りまで付き合わせてしまって。」
フミヨ「ううん、でも思い出してくれて良かった。体の方はもういいの?」
栗矢「明日、診察に行って、もう別に悪く無ければ、大丈夫じゃないかな。」
フミヨ「そう、よかったじゃない。私も言わなきゃいけない事があるの。」
栗矢「・・・・・・」
フミヨ「実は、父の身体の具合が悪くて最近入院したのよ、最初は昏睡状態だったけど最近やっと意識が戻ったの、でも後遺症があって体がまだ自由に動かない状態で、もし退院しても元の職場に戻れそうも無いのね。今は幸いに、母が喫茶店を経営しているから、生活には困らないけど、でも私は一人っ子だから、将来は面倒を見なければいけないと思うの。」
栗矢「将来は、喫茶店を継ぐことになるのかい?」
フミヨ「それは判らないけど。病院で、あなたのお母さんの話しを聞いた時に、栗さんの気持ちが判ったの。でも私には無理、だって此処を離れられないから。」
栗矢「僕も迷った。陶芸家を継ぐべきか、それともサラリーマンの生活を続けるか、仕方がないよ人には道という物がある。親の恩や周りの人たちの思いも無視できないから、今急いで決めなくてもいいと思う。・・・家まで送るよ。」
フミヨ「いいの?」
注釈(二人は栗矢の自動車に乗り込む、車内で栗矢はフミヨの気持ちを聞いた。)
栗矢「室田のところは、赤ちゃんはいつ頃だろう。」
フミヨ「まだ先だと思うけど、それよりドイツにはいつ行くの?」
栗矢「1ヶ月後かな、体の調子が悪くなければそうなると思う。」
フミヨ「私さぁ、劇的な出会いで結婚するって素適だなぁと思う。」
栗矢「劇的な出会い?」
フミヨ「マナミと室田さんの出会いも、劇的だって言っていた。お店で会った後、大雨の日に偶然に出会って、それからお付き合いが始まったって。室田さんは、いつもの白い車じゃなくて、雨なのに歩いていたらしいの、マナミが買い物に車で行った時だって言っていた。」
栗矢「雨の日?」