高大「ワシの母が早くに他界して、後添えでは無いのですが、有る女性に生ませた子です。ワシ達夫婦には、子供が出来なかったので家族として、一緒に住むようになりました。」
信子「実の子のように、育てました。」
フミヨ「それで、本当のお母様は?」
信子「あの方は、名前は志乃さんと言われるのですが、昨年の夏に風邪をこじらせて、先代を追うように亡くなりました。」
高大「実の子のように育てたと言っても、両親は最近まで健在でしたから、つらい事も有ったかも知れません。」
信子「母親から引き離されて暮らすのだもの、寂しい事も有ったでしょう。いじめに遭った事も私どもには何も話しませんでした。いじらしい子です。
フミヨ「・・・すみません。そんな大切な事を聞かされても、まだ私には何もお答えできなくて。」
信子「そうでした、こちらから一方的に話しました、あなたにも事情がおありよね、ご迷惑な話しでしたかしら。」
フミヨ「いえ助けて頂いたのに、申し訳有りません。」
注釈(その時ドアをノックする音がして、ナースが入ってきた。)
(コンコン、)
看護士「失礼します。お脈を診に来ました。栗矢さん栗矢サーン、まだ意識は戻らないのかしら、あら手が動いたみたい、栗矢サーン栗矢サーン聞えますか?こっちへ来てくださぁい。」
注釈(看護士が脈を取ろうと腕を握った時、栗矢の指先が動いた。栗矢は、ゆっくりと目を開けて意識を回復した。)
看護士「栗矢さん、気が付れましたね、ここがどこか判りますか?病院ですよ。
御家族の方がお見えですよ、お脈は後で計りましょう。」
注釈(看護士は、インターホンのスイッチを押して、ナースセンターに連絡する)
今後士「栗矢さんの意識が戻りました。また後で伺います。」
高大「気が付いたか。」
信子「どこか痛いところは無い?」
フミヨ「気が付いて良かった。」
栗矢「ああ、二人とも来てくれたんだ。」