フミヨ「あのう、お父様とお母様ですか?」
信子「このお花、あなたが持ってこられたんですね?ありがとう。」
注釈(花瓶に生けてある、1輪の草花をさして信子はフミヨにお礼を言った。)
フミヨ「あの時は気が動転して、道に咲いている花を生けました。代わりのお花を持って来たので生け直してきます。」
信子「あら、それは私が・・・では一緒に生けましょう。」
注釈(そして二人は一緒に病室を出て、給水場へ向かい、信子とフミヨは女同士の会話を始める。)
信子「あなたの事は、8月に帰ってきた時にヒロヨシさんから、伺っていました。」
フミヨ「私の事を、ご存知でしたか。」
信子「あなた達は、真剣に交際しているの?それともお友達のつもり?」
フミヨ「それは、・・・私にもまだ・・・」
信子「あの子は、やさしい子よ。私たちにも色々してくれるし、この腕時計もあの子が誕生日のお祝いに買ってくれたのよ。さあ、これでいいかしら?」
フミヨ「はい、残りは私が片付けます。」
信子「一緒にいきましょう。」
注釈(二人は、一緒に病室に入った。)
高大「さっきの花も良かったが、これは一段ときれいだ。」
信子「私、腰掛けを借りてきます。」
高大「地震の時は一緒だと聞きましたが、あなたはケガをしなかったの?」
フミヨ「あの時は、何がなんだか判らなくて私と栗矢さんがテーブルの下に潜って、彼が私の上から被さって、すみません。私だけ無傷でホントに・・・」
高大「安心しました、一緒にいたのがあなたでそして無傷だった事が、ひろよしは自分の身よりあなたを守りたかったんでしょう。」
信子「先生は、今日ぐらいに意識は回復するはずだって言っていたから、そう思い詰めなくてもいいのよ、X線では異常ないそうだから、もうじき目が覚めるでしょう。」
高大「あなたは、特別な人のようだから話ししますが、この子はワシ達夫婦の子供でないんです。」
信子「あなた、それはまだ・・・」
高大「ヒロヨシからは、言いにくだろう。」
信子「いずれ判る事ですけど、」
フミヨ「あの・・・・
ナレーション(高大の思いがけない話しに、フミヨは声を詰まらせ、一瞬にその場の空気が変わってしまった。)
信子「びっくりしたでしょう。実は夫の弟なのよ、先代のお父様が独り身になった時にお作りになったのよ。」
フミヨ「・・・・」