フミヨ「明日からのリハビリ、私も時々見に来るから、頑張らなきゃね。」
注釈(冨士男は涙をためて、自由の利かなくなった体を揺り動かしながら、はがゆい顔をしていた。)
ナレーション「フミヨは、アパートから自宅に通うのに、昼のバイトだけではなく、夜の仕事も休むことになり、栗矢と会う機会がなくなる事が気がかりだった。一方栗矢は父タカヒロから実家に戻るように催促の手紙をもらっていた」
注釈(場面が変わり、栗矢がアパートの郵便受けから手紙を取り出し、父のタカヒロからの手紙を読んでいる。)
手紙「やっと、栗右ェ門襲名の手続きは問題なく終わった。役場に行くやら、お得意先の挨拶周りやら、慣れない事で少々疲れた。おまえが早く戻ってくれると助かるのだが、決心はまだつかないのか。それはそうと窯業学校のほうから依頼があって、ドイツから陶芸講師と助手を二人呼ばれているそうだ。講師は窯業学校の先生に決まったそうだが、助手をヒロヨシに頼めないかと言ってきた。期間は1年か2年らしい、勉強のつもりで行ってきたらどうか。いずれにしても会社勤めに、けりを付けて考えてくれないか。」
注釈(アパートの一室で、手紙を呼んでいると、栗矢の携帯電話が鳴り出す)
栗矢「はい、栗矢です。なんだ室田か」
電話の室田「なんだは、ないだろう。せっかく心配して電話してやったのに、彼女と二人で帰ったと聞いたから電話したのさ、彼女と一緒だろう、マナと変わるから彼女と変わってくれ。」
栗矢「おい、勝手なことをいうなよ」
マナミ「あら、もしもし富美ちゃんは?いないの?」
栗矢「いないよ、途中で別れたから。」
マナミ「そう、携帯がつながらないから、栗矢さんと一緒だと思ったのに、病院に行ったのかしら。」
栗矢「ビョーイン?」