注釈(場面が変わって、数日後の土曜日の商店街で室田と栗矢が歩いている。)
室田「茶碗の件は、うっかり話してしまったけど、あれはお前の為に言ったつもりだ。」ナレーション「室田は、自分が話した窯元の事に後ろめたさを感じたが、それを栗矢に恩着せがましく誤まかした。」
栗矢「話してしまったから仕方がないけど、お前の秘密と僕の秘密は、誰にも明かさないって約束しただろう。だけどお前の場合は、いつかは話さないといけなくなるぞ。」
室田「実は、その事でオフクロが来週にも、こっちに出てくる。」
栗矢「へぇ、久しぶりだな、何か用事でもあるのか?」
室田「用事も何も、今度結婚する事になる。だからその秘密は、俺が話さなくてもオフクロが話して廻る事になるのさ。」
栗矢「相手は、あの子か?そうか、一緒に住んでいるって聞いていたけど、とうとう嫁に貰うのか。」
室田「マナミのお腹に出来ちゃってな、用心はしていたけど、大丈夫って言うからつい安心してな、・・・そういう事。」
栗矢「彼女は、知っているのか?別に悪い事じゃないから、言いやすいだろう。」
室田「ああ、少しだけ話した事があるけど、前にマナミの姉さんにこっぴどくやられたからなぁ。」
栗矢「お前の名詞を信じなかった事か、女癖の悪いジゴロ扱いだったらしいな。」
室田「そうさ、だから冗談だと思っているようで、普通だったら知り合いにそういう人間がいたら、自慢すると思うけどなぁ。」
栗矢「それは嫌じゃないのか、だから秘密にしたのじゃないのか?悪い奴が聞いたら、利用されて後で大変な事になるぞ。」
室田「どっちにしても、オフクロが全部話すだろうよ、向こうの両親が聞いたらどんな顔するかな。」