注釈(二人の仲を知っていて、からかい半分におどけて見せたママよう子だったが、ヒロミは生真面目に栗矢を問い正してきた。)
栗矢「栗右ェ門?それ誰に聞いたの?アイツだな、全く困ったものだな。」
注釈(そのときフミヨが、店に入って来たが訳も分からず、栗矢の横に座らせられた。)
フミヨ「おはようございます。」
ママよう子「ちょうどよかった、富美ちゃんこっちへ来て、そこに座って。」
フミヨ「何ですか、これは昨日の・・・」
栗矢「何で持って帰えらなかったの。二人とも勘違いしているぞ。」
フミヨ「だって、数百万円もする物は貰えないわよ。それで皆が集まっているの?」
栗矢「待ってよ、僕の話しも聞いてよ。これは数百万もする茶碗じゃないよ!去年里帰りした時に僕が轆轤で引いて、親父が後で窯に入れて焼いた物だよ。だいたい数百万とか栗右ェ門とか、誰が言い出したの?もしかして室田かい?」
ヒロミ「室田さんが、お祖父さんが栗右ェ門だって言ったわよ。」
栗矢「僕のお祖父さんは、一昨年に亡くなった事は、ママに言わなかったかなぁ。」
ママよう子「あぁ、そうだったわ、思い出した。すっかり忘れていた。」
注釈(その一言で、張り詰めた緊張感は一瞬に解きほぐされた。)
ヒロミ「じゃ大した物じゃないのね。心配して損したみたい、ねぇ富美ちゃん。」
フミヨ「二足三文の品なの?安心したら気が抜けちゃった。」
栗矢「ニソクサンモン?それはないよ。僕の気持ちの固まりだよ。」
フミヨ「気持ちが入っているの?なんかキモチワルイー。」
ママよう子「そうよねぇ、愛が詰まっているの?私は栗ちゃん愛はいらないから、ビールを貰ってもいい?」