「うわ・・・」 
バスは空いていたのに、ライブ会場前の入り口には
目が痛くなるほど人がいた。
「これ全員ファンの人?」
私がキョロキョロしながら聞く
「うん、今日は少し少ないくらいだよ」
そんなに人気あったんだ・・・
その言葉は優雅に言えなくて心に隠した。
最後尾の看板を持ったお兄さんの前に並んだ。
「はい」
優雅はカバンから中にチョコが入った丸いクッキーと
小さいサイズのオレンジジュースをくれた。
もうすぐ夏だからか太陽の光が強くて暑い。
「なんか、野球観戦行くときみたい。」
私がボソッと言うと
「あー、それ納得。」
とポテトチップスを食べながら優雅が言う。
「あ、もうすぐ開場するよー」
私の腕時計は13:42をさしていた。
「チケット渡したっけ?」
「ううん、もらってない」
横長のチケットを優雅からもらってポケットにしまった。
「ゆっくりお進み下さーい」
会場の係員が大きな声で一斉に声をかける。
「さっきのジュース残ってたら紙コップに入れて。」
私の片手にあるジュースをみて気づいたよう優雅が言った。
「ごめん、全部飲んじゃった。」
「いいよいいよ、暑かったし。そこの売店で飲み物買おうか!」
会場の広いロビーには人がたくさんいて、すぐに迷子になりそうだった。
優雅が手を引いてくれているおかげでそれも免れた。