一つ一つ、2人との思い出を思い出していけば、目頭が熱くなってくる。
「…お前、絶対泣くだろ」
今にも泣きそうな私をみて、雅は苦笑する。
「だって…めちゃくちゃお世話になったし…。守ってもらった」
「…そうだな。たぶん、つか絶対、あの人等以上の人はいないよ」
「うん…。私もそう思う」
ホントに、いい先輩だった。
だからこそ別れが辛くて、今までみたいに先輩達がいてやってこれたことができなくなりそうで不安になる。
「―――…心配すんなって」
不安が顔に出ていたのだろうか。
雅は暖かい手で安心させるように、私の頭を撫でた。
「あの人等にはかなわねーかもしんねぇけど、…俺がいるから」
“――…絶対、守るから”。
前も囁いてくれた言葉をもう一度、繰り返した。
「……うん」
私は先輩も苛めも、…世界全てさえも、全然怖くなんかないよ。
だってこんなに強い言葉と、暖かい手があるんだから。
だから、この手さえ無くならなければ、後はどうなったっていいんだよ。
「それじゃ、そろそろ行くか…」
雅の手が頭から離れ、右手に移る。
「そうだね…」
暖房のついた部屋から一歩外に出て、白い息をはき歩き出すとともに、マフラーに顔をうずめた。

