* * *
「はぁー…」
朝方の芯まで凍るような寒さに身を縮めながら表へと出る。
いつもより肌寒く、そして見慣れた一面真っ白な景色に少し切なさを感じるのは、今日が1つの節目の日であるからだろうか。
薄暗い天気の中、もう朝迎えにいくのが日課になった雅の家へ足を踏み入れる。
「…お邪魔します」
答える声はない。
私の足は自然と、階段を上り雅の部屋へと進んでいく。
「――――雅?起き…」
いつもの通り部屋のドアを開け、寝ているであろう雅を起こそうとしたのだが…。
「おはよう、永遠」
ベッドには微笑み座る、雅のすがたがあった。
それに、少し驚く。
「…今日は、早いんだね」
「まぁな…。今日だけは遅れちゃいけねーって思ったから」
「………そっか」
雅にとっても、大切な日なんだよね。
「―――卒業式、だもんね」
「あぁ。…彩花と玲音さんのな」
「2人には、たくさんお世話になったもんね」
「かなりな。…めちゃくちゃ頼りになる人等だったからな」
思い出を辿るように、目を閉じる。

