心詩 ー モウイチド、モドレルノナラ ー





「お前、俺に隠し事できると思うなよ」


怒ったような呆れたような声が階段の踊場から聞こえる。


「――…ったく、彩花喋りすぎだ」


雅は軽く彩花先輩を睨み、それから私を手招きする。


その手に従って下へ降り、雅と同じ踊場へ立つ。


「お前の嘘はバレバレなんだよ」

「…………」

「お前はすぐ、顔に出るからな」


“だからな、”そう言って、雅は一呼吸おいた。

そして中学に入って私より少し大きくなった身長で、私と目線を合わせるようにして少し屈む。


「抱え込むなよ。何でも話せ」

「――…」

「そのための俺らなんだ。俺は自分とお前を守れないほど弱くない」


そう言って、雅は私の頭を優しく撫でてくれた。


「あ……り…がと……」


涙がポロポロと零れる。


辛いの、分かっててくれたんだね。

我慢してたの、分かってたんだね。


ありがとう…ありがとう、雅。

私は雅に迷惑かけるばかりで、守ってもらうばっかりで…。

けど、雅はそれでも守ってくれるんだね。

ほんっと、ありがとう…。



雅…。

でもさ、私ね。


雅に自分自身もちゃんと、大切にしてほしかったよ…?


ちゃんと心を、大切にしてほしかったよ…。