「ちょ、雅!!」
慌てて追いかけようとすると、後ろからクスクス笑う先輩の声が聞こえて、思わず立ち止まる。
「彩花先輩?」
「あ…ごめんごめん……ふふっ」
なにがそんなにおかしいんだ?
「永遠ちゃん」
「はい?」
「雅が何で陸上入ったか、知りたい?」
「…足が速くなりたいからじゃないんですか?」
雅はもともと足速いし…。
すると先輩は首を振ってからクスッと笑った。
「――…永遠ちゃんがね、心配なんだって」
「―――…へ?」
「言ったの雅が。2、3日前に雅が私のとこに入部届持ってきたときにさ、私本当にびっくりして」
「………」
「雅は欲がないから絶対速くなろうと思って来たわけじゃないって思って、聞いたの。…なかなか口を割らなくて大変だったけど、最終的にそれだけ言って、フラッとどっか行っちゃった」
「………私の、ため?」
驚いて余り口が回らなくて、囁くような声しか出ない。
心配?なんで、雅が私を?
「永遠ちゃんさ、結構先輩といろいろあったでしょ」
なんで…彩花先輩がそれを?
疑問が顔に出てたのか、先輩が少し悲しそうに微笑みかける。
「めちゃくちゃ心配してたよ」
「―――!」
胸がジンと熱くなった。
…必死で隠してたつもりだったんだけどな。
分かってたんだ、ちゃんと。

