心詩 ー モウイチド、モドレルノナラ ー





「あっもう部活の時間だ!」


はっとしたように声を上げる彩花先輩。


「わっほんとですね!急がないと」

「うんっ。それじゃ2人供、一緒に部室まで行こうか」


先輩のその言葉に、ひとつ引っかかりを覚える。


「――――…2人供?」


首を傾げると、ハッと驚いたように雅をみる先輩。


「へ!?あれっ言ってなかったの雅?」

「あ……あぁ、まぁな」

「あ!もしかして心配」

「黙れ」


彩花先輩の言葉を遮り、照れたように視線を逸らし頭を掻く雅。


…なに?どうしたの?


照れる雅の意味も分かんないけど、私達を見てニヤニヤする先輩の意味はもっと分かんない。


「ふーん…なるほどね」

「お前もう喋んな」


低い声を出したって、説得力がない。


「ねぇ、何の話?」


焦れったくなり、顔を逸らしたままの雅に近寄り、正面に回り込む。

すると雅の手がスッと伸びてきて、私が雅の顔をみる前にその手で視線を無理矢理逸らされた。


「ちょ、なに」

「―――――…から」

「え?」

「…俺も陸上、入ったから」

「……へ?」


抵抗していた力が抜ける。


「ほんと!?」

「あぁ」

「なんで!?」

「さぁな」


それだけ答えると、雅は先に階段を降りていく。